建設業許可と確定申告

現在、建設業では大変な人不足で、仕事はいくらでもあるといった状態です。

そんな中で、建設関係の仕事で会社を興したいという方も少なくなかろうかと思います。

下請けとして少額の業務だけを請け負うということであれば問題ありませんが、元受けとなり大規模な仕事まで受注していきたいとなると必要となるのが建設業の許可申請です。

当事務所でも行政書士事務所を併設しておりますので、許可申請は代行していますが、要件はかなり厳しいものとなっています。

最もクリアするのが難しい要件が経営管理者要件です。簡単に言えば建設業を行う会社の役員を5年以上務めた経験があるものということです。

普通は、会社の役員など早々なれるものではありませんし、ましてや20代30代で起業を目指す方がこのような経歴を持っていることはまずありません。

つまり、現状では建設業許可の取得のハードルは非常に高いものとなっています。私どもは法令順守を心がけておりますので、どうしても要件を満たさない場合は、丁寧に説明を行い、しばらくは建設業許可の要らない業務を行う会社を設立することで、納得を頂いております。

一方で同業者の中には明らかな虚偽記載をもって許可申請を行う方もいます。

スキームは簡単で、経歴を詐称するということです。流石に会社の役員にはなれませんので、個人事業として経営を行っていたことにします。個人事業であれば確定申告を行う必要があり、当然許可申請の際にも申告書を提出する必要があります。当然、事業など行っていないため確定申告など行っていません。またわざわざやってもいない事業の申告で税金も納めたくない・・・。

どうするかというと、赤字の確定申告書を5年間遡って提出します。赤字であれば税金はゼロです。請求書などは身内の社名を使って適当に書きます。

これらを代行する行政書士というのが世の中には少なからずおられるようです。

もちろんこんなことで役所や税務署は黙ってはいません。後日、税務署から調査を行いたいという連絡が来ても、代行した行政書士は助けてはくれません。本来代行してはいけない申告書の作成を行っているわけですから、必ず、「私は知りません、あなた方が勝手にやったことです」と逃げます。

 

正直な印象ですが大阪府庁もわかっていて野放しにしているというのが現状だと思います。5年分まとめて申告書を提出するなどまともに事業を行っている方であればあり得ません。また5年間全て赤字というのもあり得ません。税理士であればだれでもわかることですが、法人の決算と違い、個人事業で赤字というのは普通はあり得ないことです。会社の場合は自分の給料も経費ですが、個人事業の場合は、自分の取り分は経費ではありません。つまり会社の場合は給料を取り過ぎて赤字というのはあり得ますが、個人事業で赤字ということは単純に生活費がないということです。こんな状態が5年間も続くなど考えられないのです。

 

このようなあからさまな手法が横行するもの単に要件が厳しすぎるからです。もっと許可要件のハードルを下げて、若い世代の経営者が堂々と活躍できる制度設計にしてもらいたいと切に願います。